PATRIOTISM

2005年10月16日
 最近三島文学にはまる。漱石だったり、太宰だったり、志賀直哉だったり、どうも文学が読めるようになってきたので、拾い読みするようになってしまった。最近読んだのは三島由紀夫の自選短編集『花ざかりの森・憂国』『真夏の死』『殉教』。『憂国』の写真が無かったので、写真は『真夏の死』から。

 司馬遼太郎の『街道を行く』かなんかの随筆で、割腹の文学者・三島について言及していたらしいが、三島は自分の作品を他人に解釈されるのを嫌って、この自選短編集では自分で解説を書いている。曰く自分の作品がどういうものか知ってほしいなら、『憂国』を読めというのだ。

 『憂国』という短編は、短い作品だが、二・二六事件に関して、切腹する中尉と、まだ結婚して半年と経たない妻が後を追うその前夜の話を描いたもの。なるほど切腹というテーマは三島らしさを彷彿させる、けれど、この作品の重要な点は切腹ではなくて、切腹するに至る感情――フロイトに言わせればエロスとタナトス――であるのだと思う。まぁ状況がつかめそうなものだけれど、その文学的言い回しはやはり巧いなと思う。

 『仮面の告白』など、三島由紀夫の作品は海外でも評価されてるので、ふと丸善へ行って檸檬を・・・じゃなくて、丸善で三島作品の英訳をしたペーパーバックを探してみた。洋書コーナーの日本人作家コーナーを探してみると、結構あるものなんだ。夏目漱石や川端康成といった文豪をはじめとして、村上春樹といった作品などいろいろ置いてあった。日本文学も人気はあるんだろうな、やっぱり。『猫である』は『I AM a CAT』で、とても分厚かった。“我輩”の滑稽じみたニュアンスが外国人に伝わったんだろうか。『KOKORO』もあったし、漱石を読んでみたいなぁと食指が動く。導入をどう訳したか気になる『Snow Country』もある。

 勿論YUKIO MISHIMAもあって、いろいろあった。短編の英訳はないかなぁ、と探してみると『PATRIOTISM』を見つける。愛国ミサイルのことをパトリオットミサイルなんて言うと、さるマニアな友人が教えてくれたことがあるのを思い出す。パトリオティズムは愛国心のことだ。『憂国』の訳らしい。数ある短編の中で、これだけが独立して薄い冊子になっている。その武士道っぷりがやっぱり受けたんだろうか。開いてみると、
On the twenty-eighth of February, 1936(on the third day, that is, of the February 26 Incident), ...
 と書かれている。二・二六事件の訳はこうなってるんだと感心して、買ってみた。

 ⇒http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/0811213129/

 日本文学を英語にしたらどうなるんだろうと、不思議に思って読んでみる。LieutenantとかImperial troopsなどといった単語は厳しいけど、結構読めるもので、元と比較してみると楽しめるね。『切腹する』を『ceremonially disembowel oneself』などと訳してたり、日本語特有の表現も無理やり訳した感も面白い。

 英語の勉強をするなら英語の本を読めと言われることもあるけど、こういう日本文学という“超名訳”が存在している英文を読むのも、結構勉強になるんじゃないかと思った。favoriteな小説が選べるわけだしね。

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