箸墓幻想

2005年1月8日
 久々に内田康夫を読む。旅情ミステリーはやはりいいもので、読後感としてその土地に行ってみたくなるというどうしようもない感動が待ち受けているのですが、『箸墓幻想』は特に面白いと思った。

 『箸墓』の名を聞いて反応する人は中々通ではないかと思うんですが、自分も反応して衝動的に読んでしまった人間の一人。箸墓古墳というのが奈良にあるのですが、その古墳、実はある超有名な女性が眠っていると言われている。

 ずばり卑弥呼。

 日本史の授業で、邪馬台国の所在地に関する『畿内説』『九州説』の対立を、実際に魏志倭人伝の史料を読んで習ったのですが、畿内説を有力させる証拠の一つに『箸墓古墳』の存在があると日本史の先生が熱弁していたのを覚えています。

 卑弥呼は小学校の頃から知っているけれど、その墓が実際にあるとなると、何とも現実味を帯びたものになってきます。そういう意味で箸墓というのは興味があるんですよね。

 それで、箸墓を舞台に内田康夫がミステリーを書いたと言うのならもう読むしかないじゃありませんか。

 中々ハラハラさせられる話でした。邪馬台国論争についても詳細に調べたらしく、『有棺無槨』や『邪馬壱国』の話(どういう意味かは読めばわかります)がかいつまいで描かれていました。浅見光彦はどうも畿内説よりの考えを持っているようですが、確かに奈良の箸墓が卑弥呼の墓だと面白いですよね。

 そういった考古学論争がテーマなのですが、勿論ミステリーなので殺人が起こります。読み進めていくうちは、登場人物が余りに少ないので犯人が別の意味でわからなかったんですが、どんどん人間関係が掘り下げられていくスタイルはとてもハラハラさせられました。

 浅見光彦が奈良だけじゃなく、飯田や青山なども行ったり来たりするので、色んなところへ行ってみたくなりました。遺跡発掘のゴッドハンドに対する言及など、あらゆるジャンルにおいて楽しめる小説で、もはやこれは推理小説には分類できないんじゃないでしょうか。犯人当てなんかどうでもよくなるぐらい、物語が楽しめました。

 浅見光彦シリーズでも結構好きな作品です。

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