THE FELLOWSHIP OF THE RING

2004年3月26日
 
 直訳すれば『指輪の仲間』なのに、何故か世間では『旅の仲間』で通じている。これも偏に、『THE LOAD OF THE RINGS』に名訳(迷訳?)を与えた瀬田貞二氏のお陰であろう。

 今春休みの暇を持て余して、指輪物語を読んでいる。兎に角古い話(話の舞台もそうだが、訳されたのは昭和時代)なので、最近の軽快な文章と違い、タラタラと背景描写が長く、キャラクターに感情移入が難しい会話が多い。

 まぁ、だからと言って、これは駄作だ、なんていう馬鹿は読書の訓練が足りないだけでしょうが、時間がないと読めない大長編。

 てなわけで、やっと旅の仲間の上巻を読み終えた。手元にあるのが何故か古い版の、字が細かいもの(新版では旅の仲間の上巻が更に2巻分に分けられているのだから、細かさがわかるだろう)なので、目も疲れましたが、これを読み終えると他の文庫の字がめっちゃ大きく感じられますね。先日、早川書房が出版したクリスティ文庫なんか、子供向けに書かれているような字の大きさだ。

 話が反れた。

 映画を見ている人にはわかるだろうが、映画ではフロドが指輪を継承して直ぐに旅に出て、直ぐにアラゴルンと出会う。この下りが唐突過ぎて、どうしてこんな危険な指輪を、ビルボはフロドに託したのだろう、フロドの友人(メリーとピピン)はどうして旅に出なくてはいけなかったのか、などと疑問が湧くはずである。

 それもそのはず。その話だけで旅の仲間の上巻を占めているのである。ただ、この辺ははっきり言ってたるい(ゆきてかえりし物語を読んでいるような気分)ので、映画では割愛されたのである。

 しかし、それを我慢(忍耐が肝心)すれば、アラゴルンが出てきて、旅の仲間が登場してスリリングな展開に発展して面白くなる。トールキンは、おそらく最初の内は、『物語』としてでなく、『昔話』を意識して書いていたんだろう。だから、描写が第三者的で、事実を淡々と説明しているような話なのである。

 あと、特筆すべきは訳者の瀬田貞二が徹底的に『遊んでいる』こと。『THE LOAD OF THE RINGS』は当然外国の話なのに、ストライダーを馳夫としたり、宿屋が踊る子馬亭とか、剣の名前がつらぬき丸だとか、フロドの親戚の苗字が全部日本語だとか、今こんな訳を書いたら、絶対にクレームの嵐になるに違いない。大体邦訳の『指輪物語』や『旅の仲間』にしても変ですし。(まあ映画のタイトル;ロードオブザリングも冠詞や、リングが複数形になってない、とか変なところはありますが)

 この“名訳”を良い意味で取るか、悪い意味で取るかは自由ですが、とりあえず『面白い』からいいじゃないか、と私は思っています。

 上巻さえ読みきれば、あとは急転直下に世界観が広がって、面白くなるので、読もうかな、と思っている暇な方は読みましょう。

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